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【GAKURINSHA TOPICS】2018年教育の行き先 学習指導要領改訂によって教科書どう変わる?

□算数・数学編

 学習指導要領とは、全国どの地域でも一定水準の教育が受けられるようにするために、学校教育法などに基づいて、各学校の教育課程を編成するときの基準として定めたものです。今回、学習指導要領が 10 年ぶりに改訂され、小学校では平成 32 年度から、中学校では平成 33 年度から新学習指導要領が全面実施されることになりました。
 今回の改訂によって、言語能力の確実な育成、理数教育の充実、伝統や文化に関する教育の充実、体験活動の充実、外国語教育の充実などが図られています。
 まず、理数教育の充実として挙げられている、小学校算数科、中学校数学科における学習指導要領の改訂について取り上げていきます。
 新学習指導要領では、小学校算数科、中学校数学科の目標が「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の3つの柱で示されており、実社会との関わりを意識した数学的活動の充実が図られています。数学的活動とは、事象を数理的にとらえて算数や数学の問題を見つけ、問題を 1 人で解決したり、複数人で協力して解決したりすることです。旧小学校学習指導要領算数編では「算数的活動」と記載されていましたが、数学的活動は、小学校においても中学校や高等学校と同じように必要な活動であるため、今回の改訂で「算数的活動」が「数学的活動」に改められました。「数学的活動」とすることによって、数学的な問題発見や問題解決の過程におけるさまざまな場面と、そこで必要な「数学的な見方・考え方」に焦点をあて、算数科における児童の活動の充実を図っています。
 指導事項のそれぞれのまとまりについても領域の構成が変更になりました。小学校算数科では、これまでは「A数と計算」、「B量と測定」、「C図形」、「D数量関係」の4領域で構成されていました。今回の改訂によって、第1学年から第3学年までは、「A数と計算」、「B図形」、「C測定」、「Dデータの活用」の4領域、第4学年から第6学年までは、「A数と計算」、「B図形」、「C変化と関係」、「Dデータの活用」の4領域となりました。中学校数学科では、これまでは「A数と式」、「B図形」、「C関数」、「D資料の活用」の4領域で構成されていました。今回の改訂によって、「A数と式」、「B図形」、「C関数」、「Dデータの活用」の4領域となりました。領域の構成の変更で、小学校算数科で新設、中学校数学科で名称変更となったのは「データの活用」です。現代社会では、必要なデータを集めて傾向を分析し、課題を解決したり意思決定したりすることが求められており、そのような力を育成するために統計教育の改善や充実が図られました。
 次に、小学校算数科、中学校数学科の教育課程がどのように変わるかについて取り上げていきます。

(1)小学校算数科
 基礎的な知識や技能の習得や思考力、判断力、表現力などの育成のために、内容の追加や指導時期の変更があります。

@グラフやデータの考察
 第3学年、第4学年、第5学年、第6学年で内容の追加があります。第3学年では最小目盛りが2、5などの棒グラフや複数の棒グラフを組み合わせたグラフ、第4学年では複数系列のグラフや組み合わせたグラフ、第5学年では複数の帯グラフを比べること、第6学年では代表値 ( 平均値、中央値、最頻値 ) が新たに扱われるようになります。第3学年から第5学年までのグラフの学習内容の充実によって、身のまわりのさまざまな事象についてグラフにまとめ、グラフから特徴や傾向をとらえたり考察したりする力の育成を図っています。また、複数のグラフを比べて似ているところや異なるところを見つけて、ほかの人にも分かるように表現し、伝え合うことでさまざまな考え方があることに気づかせ、思考力、判断力、表現力の育成を図っています。代表値は、これまでは中学校第1学年で扱われていましたが、第5学年までに学習してきた表やグラフの特徴や傾向をとらえることを利用して、第6学年では目的に応じたデータの収集や分類整理、代表値の適切な選択など、一連の統計的な問題が解決できるようになることや、結論を批判的にとらえて、それが妥当かどうかを考察することができるようになるというねらいがあります。

Aメートル法の単位のしくみ
 第3学年、第4学年、第5学年で内容の追加があります。これまでは第6学年で扱われていましたが、第3学年では k( キロ ) や m( ミリ ) などの接頭語について、第4学年では長さと面積の単位の関係について、第5学年では長さと体積の単位の関係について、新たに扱われるようになります。第3学年では長さ、重さ、かさの単位から、単位の前には k( キロ ) や m( ミリ )などの接頭語がついていることに気づかせ、それぞれが倍の関係にあることを考察して理解を深めさせることで、今後学習する単位のしくみを考えることにつなげていくというねらいがあります。第4学年、第5学年では、長さの単位間の関係をもとに面積や体積の単位間の関係を考察して理解させ、面積や体積の大きさの感覚を育成するねらいがあります。

B簡単な場合についての割合
 これまで割合は第5学年のみで扱われていましたが、第4学年でも扱われるようになり、割合の内容が充実します。第4学年では簡単な場合について、数量の関係どうしを比較するために割合を用いることを学習し、第5学年での割合の学習につなげていくねらいがあります。

C速さ
 これまで第6学年で扱われていましたが、第5学年で扱われるようになります。速さを単位時間あたりに移動する長さととらえて、単位量当たりの大きさとともに学習するため、第5学年での扱いになっています。

D分数 × 整数、分数 ÷ 整数
 これまで第5学年で扱われていましたが、第6学年で扱われるようになります。これは、分数も整数や小数と同じように交換法則、結合法則、分配法則が成り立つことや、乗法の性質や除法の性質が分数の乗法や除法についても成り立つことを、理解させるねらいがあります。

E素数
 これまで第5学年で扱われていましたが、中学校第1学年で扱われるようになります。

(2)中学校数学科
 小学校算数科と同様に、基礎的な知識や技能の習得、思考力や判断力、表現力などの育成のために、内容の追加や指導時期の変更があります。

@データの分布
 第1学年から第3学年までのすべての学年で内容の移動や追加があります。第1学年で扱われていた代表値は小学校第6学年で扱われるようになり、誤差や近似値は第3学年で扱われるようになります。第1学年では「累積度数」という用語、第2学年で扱われていた統計的確率が新たに扱われるようになり、第2学年ではこれまで高等学校で扱われていた四分位範囲や箱ひげ図が扱われるようになります。
 中学校数学科において、第1学年では目的に応じてデータを収集し、ヒストグラムや相対度数などを用いてデータの傾向をとらえることを学習します。また、複数回の試行によってデータを収集することで、確率について学習します。第2学年では、四分位範囲や箱ひげ図から複数の集団のデータの分布をとらえて、傾向を比較して批判的に考察して、判断する力を養うねらいがあります。また、同様に確からしいことを利用して、数学的に確率を求めることができる場合があることを学習します。第3学年では、これまでの学習から、母集団の一部分を標本として抽出する方法などから母集団の傾向を読み取り、標本調査の方法や結果を批判的に考察して表現したり、母集団の傾向を判断したする力を養うねらいがあります。

A自然数の素因数分解
 これまで小学校第5学年で扱われていた「素数」という用語、第3学年で扱われていた自然数の素因数分解が、第1学年で扱われるようになります。これには、算数で学習した倍数や約数などの整数の性質をとらえ直させるというねらいがあります。

B反例
 第2学年の図形の学習において、「反例」という用語を追加することで、事柄が正しくないことを示す方法を扱うようになります。

 このように、小学校算数科、中学校数学科では、学習内容の追加や学年間移動にともなって、教科書の内容が変わります。また、平成 30 年度からは移行措置が始まるので、その補助教材に注目する必要があります。(文/学林舎編集部)