2018.08.24

2018年教育の行き先
 学習指導要領って?

 昨年、坂本龍馬が高校の教科書から消えるかもしれないというニュースが一部で話題になりました。このニュースは歴史用語を絞るために坂本龍馬などの有名な人物を歴史用語の選定基準より外そうとしたものでした。しかし、世間の意見も踏まえて、選定基準を変更し、「国民的な関心を呼んでいる人物や事件について」は「歴史への関心を喚起する手がかり」としました。教科書は学習指導要領に沿って作成されています。学習指導要領とは何か、教科書の変更を具体的に解説します。

■学習指導要領とは何か
 全国には学校が数多くあります。もし、学校ごと、もしくは先生ごとに学習する内容が異なるとすれば、その学校を卒業した段階でどの程度の内容を習得しているのかわからなくなります。そこで、一定の水準で教育を受けられるようにするための基準が必要となります。これが学習指導要領です。学習指導要領は、文部科学省が学校教育法などに基づき、小学校、中学校、高等学校等の学校種別ごとに、学習目標や大まかな教育内容を定めています。学習指導要領があるからこそ、北海道から九州・沖縄までおおよそ学ぶ内容が同じなのです。公立学校は、学習指導要領や年間の授業時数、地域性や状況に応じて、教育課程(カリキュラム)を編成しています。

■学習指導要領改訂の目玉
 学習指導要領は、基本的に10 年に一度、大規模な見直しがされており、昨年に新しい学習指導要領が発表されました。今回の改訂のポイントは「主体的・対話的な深い学び」です。アクティブラーニングともいわれます。「主体的」とは、自分自身が学ぶことに関心をもち、次の学びにつなげていくことです。「対話的」とは、例えば他の人と対話をすることで自身の考えを広げていくことです。「深い学び」とは、例えば問題を見つけ、解決策を考えたり想像したりすることです。
 「主体的・対話的な深い学び」は、一教科の話ではありません。学習活動全体を見直して、「何ができるようになるか」を明確にしようとしています。
 他の大きな変更点は、小学校からの外国語教育と情報活用能力(プログラミング教育を含む)、道徳の教科化です。他には、表現力の向上などの言語能力の育成、理数系科目の授業時数の増加、伝統文化に関する知識や体験の充実、職業教育の充実などです。

■教科書の変更
 学習指導要領の改訂を受け、学ぶ内容が変わるので、教科書も変更されます。これを教科書改訂といいます。文部科学省が学習指導要領の改訂内容を発表するとすぐに学習指導要領に沿って、民間の出版社によって、教科書が作り直されます。その後、教科書検定を受けることになります。教科書検定とは、文部科学大臣が教科書として適しているかを審査することです。この検定に合格したものだけが、全国の学校で使用されます。教科によって異なりますが、現在の教科書は小・中学校で2~8種類あります。
 小学校は今年度に、教科書検定が行われます。そして2019 年度に、各市町村や都道府県の教育委員会によって、どの教科書を使用するかが採択され供給されます。
 2020 年度から小学校で新しい学習指導要領に対応する教科書を使用します。
 同様に中学校や高等学校の教科書も教科書検定や教科書の採択が行われますが、小学校とは、年度が異なります。新しい学習指導要領に対応する教科書を使用するのは、中学校では2021 年度から、高等学校では2022年度からです。(文/学林舎編集部)