2018.10.19

2018年学習の行き先
防災教育について考える

 日本は自然災害大国です。1995年に発生した阪神・淡路大震災や2011年に発生した東日本大震災などでは、多くの尊い命が失われました。今年は大雨、地震、台風などが相次いで発生し、自然災害は「まれに起こる」ものから「よく起こる」ものに変化しつつあります。そんな現在では、大人だけではなく、子どもたちにも、自然災害に対応する力を身に付けることが求められています。そこで、今回は現在の日本における防災教育の状況を分析・解説し、どのように自然災害に対して準備するかを考えます。

■現在の防災教育の状況
 防災教育といえば、避難訓練を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。しかし、その多くは火災に対するもので、自然災害に対する訓練は、地震や津波等の大規模自然災害の被災経験がある地域や、災害の切迫性が高い地域の学校以外ではあまり行われていないのが現状です。
 また、避難訓練のような全体指導だけでは、それぞれの学年における発達段階に対応しておらず、子どもたちに身に付けさせたい防災の知識や能力があいまいになってしまいます。
 さらに、学校における防災教育では、実際に子どもたちに指導をする教職員への研修が不足しています。そのため、防災教育の必要性は感じつつも、そのやり方やよりよい教材がわからず、あまり積極的に実施できていない学校もあります。

■自然災害に対する備え
 自然災害はいつ、どこで、どのような被害をもたらすかわかりません。そのため、防災教育は特定の地域や学校で行うのではなく、各市町村の防災部局や教育委員会、警察・消防など複数の関係機関と連携し、被災経験の有無にかかわらず継続して行うことが大切です。
 また、防災教育でも各教科のように、それぞれの学年における発達段階に応じた目標や内容を示す必要があります。例えば、文部科学省による「発達の段階に応じた防災教育」では、以下の目標が掲げられています。

・小学校段階……日常生活の様々な場面で発生する災害の危険を理解し、安全な行動ができるようにするとともに、他の人々の安全にも気配り出来る児童。

・中学校段階……日常の備えや的確な判断のもと主体的に行動するとともに、地域の防災活動や災害時の助け合いの大切さを理解し、すすんで活動できる生徒。

・高等学校段階…安全で安心な社会づくりへの参画を意識し、地域の防災活動や災害時の支援活動において、適切な役割を自ら判断し行動できる生徒。

 このように指導の体系化を図ることで、避難訓練などの全体指導だけでは不足していた自然災害に対する「主体的に行動する態度」を、子どもたちに学ばせることができるのではないでしょうか。
 これらを考慮した防災教育を行うために、とても有効なものがあります。国土交通省が運営している「防災教育ポータル」というサイトです。
(http://www.mlit.go.jp/river/bousai/education/index.html)
 このサイトは、学校で授業を行う教職員をはじめ、私たちが防災教育に取り組む際に役立つ情報・コンテンツとして、国土交通省の最新の取り組み内容や授業で使用できる教材例・防災教育の事例など8機関75サイトを紹介しています。このサイト以外にも防災教育に関連するサイトや書籍は多数存在し、それらをうまく組み合わせることで、より優れた防災教育を行うことができるのではないでしょうか。学校における防災教育は、学習指導要領にある「生きる力(確かな学力、豊かな心、健やかな体を表す知・徳・体のバランスのとれた力)」を育てることにもつながります。防災教育を充実させることで、自然災害に強い学校や地域づくりを発展させましょう。(文/学林舎編集部)