2019.05.17

2019年学習塾の行き先 教えるのではなく指導する 覚えさせるから考えさせる

  この10年で、学習塾の指導形態の80%以上が個別指導を取り入れるようになりました。その多くが1対1のマンツーマン形式によるもので、手取り足取り子どもたちに指導をしているのが現状ではないでしょうか。
 指導形態が、この10年でなぜこの形式になったのでしょうか? 理由の一つに生徒や保護者のニーズがあります。「自分だけを見てほしい」「自分の子どもだけを見てほしい」という願望です。
 この願望に対して積極的に応えたのが家庭教師のシステムといえます。しかし、本来、指導方法が違うはずの学習塾が、家庭教師のシステムを取り込んだことによって“学習塾の良さ”という最も大切な部分をなくしたように、私は思います。
 今から30年以上も前になりますが、私が高校生の時に通っていたような学習塾の多くは、どちらかというと学習塾というより“私塾”というイメージが強かったように思います。そして“教えてもらう”というより“指導してもらうために自分が勉強する”といった学習形式でした。そして何よりも、先生と生徒に良い“距離感”あったように思います。現在の先生から、この“距離感”がわからないというお話をよく聞きます。保護者の世代が変わったから、社会の状況が変わったからという理由もあるでしょう。そのために昔とは違った対応が求められるのかもしれません。しかし、昔のような良い距離感は“ニーズ100%”“手取り足取り”“1から100まで教える”という今の学習塾とは異なっていたからこそあったもののように思います。それが、学習塾で学ぶ者にとっては良かったと、私は思います。つまり、“考えさせてくれる時間”が昔の学習塾にはあったと思います。
 では、これからの学習塾にどのような学習指導が求められるのでしょうか。
◇求められる2つの力

○自覚しながら学習をする“力”を目指す
 最近、多くの先生に「どうしたら、子どもたちは学習意欲がでるのでしょうか」と聞かれます。ひとつには、目的・目標の明確化があります。たとえば、“受験”は良いか悪いかは別にして子どもたちのやる気を向上させます。しかし、この目的・目標は、知識を詰め込み、習得した知識を生かせないまま忘れていくという多いです。簡単な言葉でいえば“丸暗記、丸忘れ”です。
 知識の習得にあたり「なぜこの知識が必要なのか」を子ども自身が自覚しなければ、本当の意味で身につけることができません。自覚させるには、文章化させることもひとつの方法ですし、対話をすることも有効です。学習者にとって「塾に来る意味、価値」をつくりださなければならないのです。

○覚えるから考える“力”を目指す
 結果より過程が、今求められています。もちろん結果も大切ですが、学習者にとっては結果は一瞬のことにしかすぎません。それまでの過程が学習者に問われているのです。この過程を充実させるには“覚える”という学習指導が中心ではできません。“考えさせる”という学習指導が求められています。
 英語であれば“名詞について文章化させる”、数学であれば“正負の数とは、実生活、社会でどのように用いられるのかを調べて、発表させる”、社会であれば“日本国憲法と他の国の憲法を比較させ文章化させる”など、子どものレベルにあわせて、1回の指導の中で何かひとつでも考えさせることが、過程を充実さえることにつながるのです。(文/北岡)