2019.09.20

2019年 教育の行き先 学校に行く理由に悩む子供たちへ

 
 文科省の調査によると、2017年度の小・中学校における不登校児童生徒数は、14万4031人(前年度比1万348人増)で、過去最多となりました。児童生徒数は少子化により減少し続けていますので、不登校児童生徒数の割合が大きくなっていることがわかります。
 特に不登校児童生徒数が増えるのが、長期休暇明けの新学期の時期です。不登校の子供たちからは、さまざまな声が聞かれます。その1つに、「学校に行く理由や意味がわからない」という声があります。私たち大人も、小学校や中学校が義務教育だからということもあり、明確に答えを提示するのは容易ではありません。では、学校は、いつどのようにしてできたのでしょうか。
 今日のような「学校」が始まったのは、江戸時代のころだと考えられます。藩ごとに、武士の子供が一度に集まってさまざまな知識を学ぶ「藩校」ができ、町や農村でも読み、書き、そろばんなどを学ぶ「寺子屋」ができました。これが「多くの子供が1つの場所に集まって学ぶ」という現在の学校の形態の始まりでした。その後、明治時代になると、教育の近代化が進み、小学校教育が義務化され、より幅広い知識を多くの子供に同時に伝えるという集団的な教育の傾向が強くなりました。さらに大正・昭和時代になり、国際情勢が緊迫化するのに伴い、小・中学校では学問的な知識を学んだりするだけでなく、戦争への心がまえや戦闘の訓練などを行ったりするようになりました。このようにして、「学校」は次第に知識を身につけるだけの場所から、子供たちの思考や生活態度にも影響をあたえる場所になりました。
 戦後になり、軍事主義的な教育は一変しました。しかし、日本が敗戦からいち早く復興するために、学校で子供たちに画一的な思考や行動を身につけさせようという傾向は変わりませんでした。結果、日本の1950年代半ばから1970年代はじめの急激な高度経済成長に、このような教育が大きく寄与したといえます。
 このような状況のなかで、子供たちは、いかに「集団から外れないか」「集団のなかで一番になれるか」を考えるようになります。そこで生まれるのが、「いじめ」や「仲間外れ」、最近では「*スクールカースト」といった問題です。このようなことが原因で、多くの子供たちが「学校に行きたくない」と悩んでいます。また、その問題解決のために、学校が保護者以上に責任を求められるようなケースが多くなり、先生の負担が大きくなっています。一方で、学校以外の学ぶ場である「塾」の増加により、「勉強は学校以外でもできる、わずらわしいことがある学校なんて行かなくてもよい」、「学校に行く意味がわからない」と言う子供たちもいます。
 学校は知識を身につける以外にもさまざまな役割をもっています。そして、学ぶ場所は、学校以外にもたくさんあります。ですので、よりいっそう子供たちは「学校に行く理由や意味がわからない」と悩むのではないでしょうか。大人でも悩む問題ですので、子供たちと理由や意味を話し合うのも1つの対応ではないでしょうか。その結果、「学校に行く理由がわからないので、行かない」と結論を出したときは、私たち大人が見守ることも、大事なことだと考えます。(文/学林舎編集部)

*スクールカーストとは、学校社会において、生徒間の序列を、カースト制度(身分制度)になぞらえた表現。アメリカの学校で発生した現象が日本でも発生しているのではないかということから、SNS上で「スクールカースト」という名称が定着しました。