2020.01.17

2020年 教育の行き先 国公立大学のAO入試

 2019年12月、文科省が令和2年度の国公立大学入学者選抜の概要を公表しました。全国にある国公立173大学604学部のうち、国立59大学222学部、公立36大学63学部、あわせて95大学285学部でAO入試とよばれる選抜方法が用いられます。つまり、国公立大学の半数以上でAO入試が実施されることになるのです。AO入試が実施される国公立大学は近年増加傾向にあり、令和2年度で大学数・学部数ともに過去最高となりました。AO入試を実施する国公立大学が増えているのはなぜでしょうか。
 AO入試の「AO」とは、アドミッションズ・オフィス(admissions office)の略称で、大学の入試管理局を示します。入試管理局とは、大学によって呼び名は変わりますが、それぞれの大学で入試を管理している事務所のことです。AO入試は、それぞれの大学の入試管理局が提示する「アドミッションポリシー(受け入れる側が期待する人物像)」にもとづいて、受験生の学習意欲や人間性、個性などで入学者を選ぶ方法です。多くの場合、スポーツや文化活動などの活動報告書や志望理由書などの提出物、面接、小論文を通して、受験者をその大学・学部の「アドミッションポリシー」にもとづいた人物かどうかを評価します。そのため受験生は、希望大学のアドミッションポリシーを調査・理解した上で入試に臨む必要があります。「アドミッションポリシー」の内容は大学・学部によって異なるので、オープンキャンパスに参加するなど、希望する大学・学部の情報を事前に集めることが重要になります。高校時代の実績にもとづき、学校長からの推薦を得て出願する推薦入試とはちがい、AO入試は出願条件を満たしていればだれでも出願することができます。
 AO入試を実施する国公立大学が増えている要因の1つに、文科省が進めている大学入試改革が挙げられます。この入試改革は、入試を通じて、学力の3要素とよばれる「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」をバランスよく評価しようというものです。国公立大学の多くの志願者は、学力試験を行う一般入試で選抜されています。そのため、「知識・技能」のみを重視することが多くなっているのが現状です。そこで、AO入試を取り入れることで、「知識・技能」だけではなく、受験生を総合的に評価しようしているのです。大学側はAO入試を行う国公立大学が増えているのは、大学入試改革に呼応した動きといえるでしょう。
 2021年度からの大学入試改革では、大学入試センター試験が廃止され、大学入学共通テストが実施される予定です。また、今後は一般入試に面接を、AO入試や推薦入試には学力試験を取り入れるなど、学力の3要素を総合的に評価する取り組みが各大学で行われることになると考えられています。
 AO入試は、大学入試改革で「総合型選抜」と名称が変わります。また、国立大学協会の方針により、AO入試や推薦入試のような総合的に受験生を評価する選抜方法で入試を実施する国公立大学は、今後も増えていくと考えられています。大学入試改革が今後どのよう進んでいくのかに注目するとともに、受験生は知識以外の分野でも力を身につけておく必要があります。(文/学林舎編集部)