2020.02.14

市立小中学校に 「単元担当制」導入を

単元担当制

 

 2019年11月、滋賀県大津市教育委員会は、一部の市立小・中学校で、「単元担当制」を2020年度中に導入することを発表しました。この耳慣れない「単元担当制」とはどのようなシステムなのでしょうか。なぜ、「単元担当制」を導入するのでしょうか。
 「単元担当制」について説明する前に「教科担任制」について述べておきましょう。2019年12月、文部科学省は、「新しい時代の初等中等教育の在り方」を公表しました(中央教育審議会初等中等教育分科会取りまとめ)。この中で、2022年度を目途に、小学校高学年から「教科担任制」を本格的に導入すべきだという提言がなされています。これまで小学校では、一人の学級担任の教師がいて、その教師がすべての教科の授業を行うのが一般的なスタイルでした。「教科担任制」は、学級担任の教師がいて、教科の授業は、それぞれの教科専門の教師が行うという、中学校でとられている授業スタイルです。この「教科担任制」を小学校高学年から本格的に導入しようという提言です。現在、すでに兵庫県や横浜市など、小学校高学年から「教科担任制」を導入している自治体があります。「教科担任制」のメリットとしては、次のようなものがあげられています。

・一人の児童に多くの教師が関わることができる。

・一人の教師の担当教科が減ることで、教材研究の時間を軽減でき、教師の負担が減る。

・どの学級も同じ授業が施されるため、学級間で差が生まれない。

・より専門性の高い授業を行うことができる。など

 

単元担当制

 

 デメリットとしては、次のようなものがあげられています。

・時間割の編成が難しい。

・主に授業を通して児童と関わるため、生活全般での指導が手薄になる。

・教師の異動への対応が難しい。など

 

単元担当制

 

 さて、話を「単元担当制」に戻しましょう。文部科学省が「教科担任制」導入を推進するなか、大津市教育委員会は、来年度中にも、準備が整った学校から「単元担当制」を導入することを発表しています。「単元担当制」は、「教科担任制」をさらに細分化したもので、一つの教科のなかで、さらに単元ごとに別の教師が担当するというシステムです。例えば社会科なら、地理、歴史、公民などに分け、各単元ごとに別々の教師が授業を行うことになります。教師がより得意な分野の授業を担当することで、授業の質のさらなる向上が期待できるということです。反面、教科数×単元数の教師の数の確保が困難なこと、教師の人件費が今よりもかさむことなどの課題があります。
 大津市教育委員会の新しい試みはこれからスタートを切ります。「単元担当制」というこれまでにないシステムをとることで、実際にどのような成果が現れてくるのか、どのような問題点が現れてくるのか、まだわかりません。また、大津市教育委員会では、「兼務による小中相互授業」「AIによる自由英会話採点」「いじめ未然防止プログラムの実施」など、いくつもの先鋭的な試みを掲げています。「単元担当制」をはじめとする、大津市教育委員会のこれらの新しい試みが、子どもたちにより豊かな成長をもたらすことが期待されています。(文/学林舎編集部)