2020.03.19

4月から始まる小学校教科書改訂

小学校で始まる教科書改訂

 現代は、変化が激しく、予測困難な時代だと言われています。急速に普及したスマートフォンなどの通信端末は、今や情報の収集や発信のために幅広い世代に使われています。AI(人工知能)技術の発展もめざましく、将来、いくつかの職業はAIが担うことになると言われているほどです。また、グローバル化の進展により、人やものが国家間を活発に行き来し、新しい技術や文化、価値観などが次々と日本に入ってくるようにもなりました。今後、次世代を担う子どもたちは、このように変化する日々の中で、新しい時代をつくっていかなければなりません。子どもたちのために、学校は教育によって何ができるでしょうか。
 2020年度より、小学校では、新学習指導要領に基づく新しい教科書を使った授業が行われます。今回の改訂において文部科学省は、学習の中で、子どもたちに「生きる力」を身につけてほしいという思いを込めています。この「生きる力」は3つの柱で成り立っています。

「生きる力」
・知識及び技能
・学びに向かう力、人間性など
・思考力、判断力、表現力など

小学校で始まる教科書改訂

 

 つまり、「生きる力」とは、社会や生活で生きて働く知識や技能(知識及び技能)を習得し、そうして学んだことを人生や社会に生かそうとしながら(学びに向かう力、人間性など)、自ら考え、判断し、未知の状況にも対応できる力(思考力、判断力、表現力など)であると言えるでしょう。この「生きる力」を育むためには、どのような授業を行うことが望ましいでしょうか。
多くの人が思い浮かべる学校の授業は、主に教師が話し、生徒は教師の話を聞きながらひたすらノートをとるというものかもしれません。しかし、「生きる力」を育むためには、従来とは違った、「主体的」で「対話的」で「深い」学びを促す授業が必要とされています。
 社会科の授業を例に見てみましょう。歴史上のある出来事について学習するとき、ただ出来事の名称や関わりのある人物名を暗記するだけでなく、「なぜ起こったのだろう」「それによってどのような影響があったのだろう」などの問いを自分で立て、当時の資料などを読み取り、考察するといった授業が提案されています。さらに、グループになって意見を出し合い、当時の社会の様子や特色について話し合うことで、より知識を深めることが可能です。その際、どのように話したら相手にわかりやすく伝えられるかを考え、ときには反対意見を受け止める経験もするでしょう。そうして身につけた深い知識や思考力、表現力などの「生きる力」は将来、社会で役に立つと思われます。

「生きる力」を身につける授業の例

国語 課題となる説明文を読んで考えをまとめ、意見を述べる。

算数 計算式や図を用いる問題について、よりわかりやすい解法を集団で考える。

理科 実験を行い、その結果や得られたデータについて集団で議論する。

社会 自身のことについて英文を作成し、発表する。

単元担当制

 

 2020年度から始まる小学校での新しい学習方法は、テストや受験のための学力を超えた、これからの時代を生き抜く力を、子どもたちに養ってほしいという思いから生まれました。子どもたちが成長し、社会の中で働いたり、家庭を持ったりした際に「生きる力」が必要になるときもあるでしょう。未知の出来事や困難に直面したとき、周りの人たちと協力しながら未来を切り開いていけるよう、「生きる力」が身につく授業を行うことが、今後、学校には期待されます。(文/学林舎編集部)