2020.03.19

全国学力テストを考える

全国学力テスト

 

 「全国学力・学習状況調査」(通称「全国学力テスト」)は、文部科学省がすべての小学6年生と中学3年生を対象として毎年4月に実施している学力調査です。国語、算数・数学などの学力を測る「教科に関する調査」と、児童・生徒と教職員への「生活習慣や学習環境に関する質問紙調査」の2種類から構成されています。調査の主な目的は、各教育委員会や学校などが、自らの教育及び教育施策の成果と課題を把握し、その改善に役立てることです。「教科に関する調査」では、国語と算数・数学が毎年実施されています。さらに、平成24年度からは理科が、平成31年度(令和元年度)からは中学で英語が、3年に1度程度実施されるようになりました。
 直近の平成31年度の調査から追加された英語の調査では、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能すべてについての出題がありました。これには小学校で令和2年度から、中学校で令和3年度から適用される新学習指導要領の内容が関わっています。新学習指導要領では、グローバル化社会に対応するため、児童・生徒が英語における「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能をバランスよく習得することを目指しています。背景には、これまでの大学入試や高校入試では「読む」「書く」「聞く」技能の評価が中心であり、「話す」技能の評価が他と比べて不十分であったという反省があります。平成31年度の全国学力テストでは、学校のコンピュータに向かって生徒が話して回答する方式が採用され、文部科学省が「話す」技能を評価し始めたことがわかります。

 

全国学力テスト

 

 また、平成31年度の調査からは、基礎知識を問う「A問題」と活用力を測る「B問題」の区分がなくなり、知識と活用力を一体的に問う形式に変更されました。それまでの調査では、A問題に比べ、自分の考えをまとめて書き表したり、複数の資料から傾向を読み取ったりするB問題の正答率が低いことが指摘されており、活用力や表現力などが課題となっていました。このA・B問題の区分見直しにも新学習指導要領が深く関わっています。
 新学習指導要領では、以下の「資質・能力の三つの柱」を育成することを目標としています。

 

1.実際の社会や生活で生きて働く「知識及び技能」

2.未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表 現力等」

3.学んだことを人生や社会に生かそうとする「学び に向かう力・人間性等」

 

要約力を身につける

 この「三つの柱」は相互に関係し合いながら育成されるという考えに基づき、知識と活用力を総合的に問う形式が採用されました。また、「三つの柱」を育成するためには「主体的・対話的で深い学び」が必要とされています。そのため、自分で考え、自分から取り組む学びを想定し、自分で調べたことや児童・生徒同士で話し合う場面を題材とした文章を読み、考えをまとめて記述させるような設問が多く見られるようになっています。
 全国学力テストでは、新学習指導要領の内容に沿って、グローバル化に対応できる英語力や知識を活用し、自分の考えを表現する力などを評価し、向上させようとしていることがわかります。(文/学林舎編集部)