2020.07.17

コロナによる オンライン学習の状況

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は全国の小中学校、高校、特別支援学校に対して、2020年3月2日からの臨時休校を要請しました。文部科学省の調査では、全国の95%以上の小中学校、高校が臨時休校を実施したことがわかりました。臨時休校要請が出された当初は、3月いっぱいで終息し、4月には通常通りの授業が始まると考えられていましたが、新型コロナウイルスの感染者数は4月以降急増し、休校要請が解除されたのはゴールデンウィークを過ぎてからのことでした。およそ3か月間、子どもたちは学校に通うことができず、家庭学習を余儀なくされたのです。

コロナによる オンライン学習の状況

 

 そのような状況下で、文部科学省が公表した「臨時休校ガイドライン」では、学習に著しい遅れが生じることのないよう、可能な限り、紙の教材やテレビ放送等を活用した学習、オンライン教材等を活用した学習、同時双方向型のオンライン指導を通じた学習などを行うように示されていました。しかし、全国に緊急事態宣言が出された4月16日時点における臨時休校中の家庭学習の取り組み状況は、「教科書や紙の教材を活用した家庭学習」の実施率が全体の100%だったのに対し、「テレビ放送を活用した家庭学習」では24%、「デジタル教科書やデジタル教材を活用した家庭学習」では29%、「同時双方向型のオンラインシステムを通じた家庭学習」に至っては5%と、いずれも低い割合でした。多くの学校・家庭でインターネット環境が整っておらず、オンライン学習が十分に実施されませんでした。

オンライン学習

 そもそも、日本は「オンライン教育後進国」といわれています。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、学校でのパソコンの使用頻度は、OECD加盟国内では最下位でした。その理由の一つは、公立の学校内のパソコンやタブレット型端末の普及率の低さにあります。文部科学省もパソコンを子ども1人に1台を支給することを目標に「GIGAスクール構想」を掲げ始めたばかりでした。オンライン学習を実施するには、パソコンやタブレットなどの端末のほかに、wi-fiなどのインターネット環境、セキュリティなどを整備する必要があります。また、家庭にパソコンがない子どももいます。しかし、私立の小中学校では、すでにパソコンやタブレット型端末を1人1台導入しているところが多く、臨時休校中でも円滑にオンライン学習が行えました。このように、オンライン学習への取り組みは、学校によって対応が分かれました。

オンライン学習

 一方、学習塾では、臨時休校を受けてオンライン授業の導入が積極的に進みました。全国学習塾協会が行ったアンケート調査結果によると、4月の時点で「すでに導入している」割合が全体の過半数を超えており、その中で3月から4月にかけて導入した割合は70%を超えていました。オンライン授業の導入にあたっては、だれでも無料で入手できるZoomやMicrosoft Teamsなどの対話型のアプリを活用する学習塾も多く見られました。日頃からスマートフォンやパソコンが身近にある小中高生にとって、これらのアプリも簡単に扱うことができるため、円滑にオンライン授業へ移行することができたようです。

9月入学の現状況

 

 このように、私立と公立の学校、各家庭のパソコン環境、通塾の有無など、臨時休校への対応は多岐にわたっています。よい環境で教育を受けられる子どももいれば、十分に教育を受けられない子どももいるため、学力格差が心配されています。緊急事態宣言が解除され、学校は再開されましたが、1年間の学習カリキュラムを例年通りこなすのは難しいと言われています。子どもたちが平等に教育を受けられるように、オンライン学習を活用する手段もあります。臨時休校によって関心が高まるオンライン学習は、今後より一層広がりを見せるのではないかと思います。(文/学林舎編集部)