2020.08.21

中学教科書改訂に関して -数学編

学習方法

 

 中学校では、2021年度から全面実施される新学習指導要領にあわせて、改訂された教科書が使われることになります。新学習指導要領では、主体的に学ぶ姿勢を重視しているため、改訂された教科書でも、生徒に深く考えさせたり、生徒どうしで議論させたりするように、さまざまな工夫がされています。今回は数学に特化して、新しく学習する内容や数学の改訂のポイントなどを紹介します。

【学習する内容の変化】
 新学習指導要領にともない、各学年で学習する内容や学年が変わるものは、下の表のようになります。

中学数学教科書改訂

 上の表のうち、新たに追加されたものについて紹介します。

 

・累積度数
 「累積度数」は、最初の階級からその階級までの度数の合計のことです。また、最初の階級からその階級までの相対度数の合計である「累積相対度数」も新たに扱われます。

累積度数

中学校新学習指導要領改訂 数学別冊より

 

・反例
 おもに高等学校数学Ⅰで学習していた「反例」の用語を新たに扱うことになります。「反例」は、あることがらが成り立たない場合の例のことです。ただ、現行の教科書から、もともと扱われていたため、今回の改訂で大きな変更はありませんでした。

 

反例

中学校新学習指導要領改訂 数学別冊より

 

・四分位範囲や箱ひげ図
 高等学校数学Ⅰで学習していた「四分位範囲」、「箱ひげ図」の内容を新たに扱うことになります。データを小さい順に並べて4等分したときの、3つの区切りの値と、最小値、最大値をもとに表す「箱ひげ図」を使うことで、複数のデータの分布を比較することができます。

 

四分位範囲や箱ひげ図

 

【数学の改訂のポイント】
 新学習指導要領で重視されている、主体的・対話的で深い学びであるアクティブ・ラーニングを取り入れやすいよう、改訂された教科書では、身近な生活の場面を通して数学的に考察するような問題が扱われています。例えば、比例と反比例では、行列に並んでポップコーンを買う場合の待ち時間についての問題や、緊急地震速報のしくみについての問題が扱われています。また、連立方程式では、カルシウムが多くとれる副菜についての問題や、全長50kmを2時間で完走できるかどうか考える問題などが扱われています。
 身近な生活の場面の問題だけでなく、数学を通して、論理的に考察したり、説明したり、レポートにまとめたりする問題についても、扱いが増えています。例えば、1次関数を利用して富士山の山小屋の気温を予想するレポートについてや、図形の証明問題の条件の一部を変更して新しい問題をつくるもの、伊能忠敬の地図の作り方と相似について調べるものなどが扱われています。

 さらに、プログラミングと数学を関連づけて学習する項目としては、プログラミングで数を並べかえる方法を考えたり、回転移動させて模様をつくるときのプログラミングの方法や改善点を考えたりするものが扱われています。
 今回の数学の教科書の改訂によって、身近な生活の場面と数学を関連づけて考えたり、数学を使って問題を解決する方法を考えたりする内容が、これまでより多く扱われています。また、数学を通して多面的に、論理的に考える力を育てるために、さまざまな工夫がされています。 (文/学林舎編集部)