2021.10.05

求められる教科書以上の学習

思考力ひらめき

 小学生の学習姿勢をみると、教科書に載っている範囲の学習をしておけば、それで充分だと考えている子どもが少なくありません。本当にそうでしょうか。また、教科書に載っていないことは学習しない、という考えの子どももみられます。教科書外の事柄は必要のない知識なのでしょうか。
 学校での学習の目的の一つは、基礎学力の養成です。これを「学校でのテストでよい点数をとるため」と捉えてしまえば、教科書範囲の学習だけで充分対応することができます。学校のテストは教科書から出題されるため、教科書を暗記してしまえばテストでよい点をとることはできます。しかし、それで果たして基礎学力の養成になっているのでしょうか。教科書に書かれた文面を頭に入れるだけでは、決して基礎学力の養成にはつながりません。身につけなければならないのは、「確かな学力」です。「確かな学力」とは、教科書を学習し、知識を自分のものとし、そこから自分で考えをめぐらし、判断し、考えを表現する力をもつことです。その力は、教科書に書かれていることだけを学べばよいという姿勢では決して身につけることはできません。教科書で学習したことの中から興味のある事柄について自ら進んで学習を深めていくことで身につくものなのです。

 

共通テストから見えてくる 求められる学力

 近年、中学入試や高校入試では「活用問題」とよばれる問題の出題が増加しています。「活用問題」とは、習得した知識を通して、思考力・判断力・表現力を問うものです。これはまさに、先に述べた「確かな学力」を問われ、教科書の範囲を暗記しただけでは解答することはできません。ただ、入試で点をとるために、教科書だけではなく、教科書の範囲外も学習するべきだというわけではありません。「確かな学力」を培っていくことは、その後の学習を容易にし、新たな探究の芽を育てていくことにつながるからです。
 それでは、どうすれば子どもたちに「確かな学力」をつけようという意識をもたせることができるのでしょうか。さまざまなアプローチがありますが、「何のために学習をするのか」というテーマで子どもたちと話をしていくことも一つの方法です。これは、ただ何となく、当たり前のように授業を受けている子どもたちが多い現状に対して、学習をすることが自分の未来につながっていることを示すという方法です。どんな夢をもっているのか、どんな仕事をしたいのか、どんな自分になりたいのか。自分の未来を想像することが、学習への意識をより明確にさせていくのです。

学習現場を考える

 子どもたちに、学校で学んでほしいことは、教科書による学習だけではありません。友だちとの関わり方、周囲の人々と協力する姿勢、先生や、自分を支えてくれる人々への礼儀などもあります。これらは決して教科書を読んだり、暗記したりすることだけで学べるものではありません。日々の学校生活はもちろんのこと、運動会や文化祭などの学校行事を通して育まれていくことが期待されます。運動会や文化祭に積極的に参加することで人と協調する、行事の運営について話し合いを行い、自分の意見を述べ、人の意見を聞く。また、行事を円滑に運営していくために自分ができる役割について考える……さまざまなことを学ぶことができます。これらの経験は、やがて社会に出たときに、「生きる力」として大いに自分を助けてくれることでしょう。
 教科書では決して学べないこともたくさんあることを知り、教科書を超えた部分についても広く学習することが大切です。