失われる書く力 寄り道をしない思考
学習現場のデジタル化が加速化しています。
加速化の要因のひとつは、コロナによる影響も多いですが、それ以上に社会全体が紙媒体からデジタル媒体への移行によると考えられます。電車に乗ってみるとよくわかりますが、30年前は本や新聞を読んでいる方々が多かったですが、現在、10人いれば8人はスマートフォン、タブレットを眺めています。日々の情報の検索も含め、音楽、ゲームはもちろんのこと人と人とのコミュニケーションツールとしてもスマートフォン、タブレットは生活の必需品として位置づけられています。
学習現場においても、zoomなどを使ったオンライン学習の普及は加速化しています。時間を有効的に使い、学習を効率よくすすめるためのツールとしてデジタル学習はかかせない状況になりつつあります。こういった状況において、大人も子どもも得た学力(学ぶ力)と失った学力があると考えています。
失った学力に書く力があります。鉛筆をもって書くということが生活から消えつつあります。大人でいえば、一日の内で鉛筆をもって何かを考えて書く、メモして書くことが失われたように思います。書くことは、私たち人間にどのような学力をあたえてきたのでしょうか。30年前は、先生の講義をメモして、そのメモをあとで見返して考えて、先生が何を言おうとしていたのかを考え、自分はどう考えるのかをまとめて書いていました。そのことにより、記憶力、要約力、表現力を向上させていたように思います。現在はどうでしょうか。わからなければ、講義は動画配信しているので後で視聴して、わからなければ見直す、検索する。現在において、講義ひとつとっても書くことはほとんどないケースもあります。
学校教育においては、評価対象のテストが書かせる形式なので、書くことは学習の中心にありますが、その多くはテストのための書くにとどまっています。本来、書くというのは自分自身が何かを記憶するため、残すための記録のツールとして存在し、記憶したものを自分の知として表現するためのツールとして、書くことの意味は存在しているように思います。それが、デジタル化によって、デジタルの中に補完され、必要がなくなる。記憶や知識はデジタルから検索して引き出せばいい。そのことによって、時間は短縮され、時間を有効的に活用でき、創造的なことに時間を費やすことができると考えますが、多くの人はそうはなっていません。多くの人は、私も含めデジタルの中で一部の人が創造したものを受けとっているだけです。それも24時間365日です。そこには、思考の寄り道ができないほど情報が文字、画像、動画でたれながされています。その情報を精選して、時間をコントロールすることはほとんどの人はできません。大人の多くもできないのだから、子どもならなおさら、それはできません。
ただ、今さらデジタルは一切やめて生活するということは不可能です。(できないことはないですが、現代人にとっては難しいです。)
コロナによって、アナログだった行動は、デジタル化しています。時代の流れ、人が進化していく過程の中で必要であるという人もいると思いますが、何かこのままでいいのかという漠然としたもやもやが私の頭にはずっとありつづけています。それを解決するためには、思考しかありません。思考するためには、思考したことを書くしかありません。(文/北岡)
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