2023.06.16

日本語における助詞の位置

小学校で始まる教科書改訂

 

 「この頃の子どもは助詞の使い方を知らないから文が書けない。」ということをよく耳にします。しかし、これは子どもに限らず言語学者の間でも昔から論議がかわされてきているほど扱いにくく、日本語の根幹にふれる部分です。簡単に言えば、英語などは単語の語順によって言語表現を達成するのですが、日本語は、語順にとらわれるのではなく助詞によって言語表現が達成されると言って良いぐらいです。このことは日本の文化と深く関わっています。
 外国の人から日本人の言葉にはふくみがあるとよく言われるように、言葉通りに受け取れない言葉がこの助詞にあるのです。
 たとえば、「私が生徒です。」と「私は生徒です。」にどんな違いがあると考えられるでしょうか。「が」と「は」の違いはあっても主語が「私が」「私は」で、述語が「生徒です」は同じです。英語では 「I am a student.」 だけです。ところがこの「が」と「は」は明らかに助詞の種類が違うのです。これを他の言葉で補ってみると、「私が(***中学校の)生徒です。」と「私は(先生ではなくて)生徒です。」というように「生徒」にふくみができてしまうのです。つまり、前者は特定の学校の生徒を指し、後者は個別的な存在を普遍的な存在の一つに位置づけたものになっています。そのほかにも、「の,に,で,と,ながら,さえ」など同じ助詞でも使い分けが必要なものがあり、助詞一つで意味が異なってくるのです。
 しかし、今の私たちの環境はこれらの助詞を使う前に「助詞」を使わなくても推察可能な条件があふれています。SNS、テレビ、漫画、携帯電話など「話し言葉」ですべてが伝達可能になっています。書くということもメモ書き程度で十分用を足せる時代であるのです。また、日本語と英語をチャンポンにした言葉があちこちにあふれていますから、助詞などリズムからすればじゃまなだけです。
 古典的な日本の文化が消えて行くように「ふくみ」のある助詞も失われ、5W1Hを成り立たせるために必要な助詞だけが残っていくのかも知れません。このことは特別悲観することではなく、むしろ、より明解なだれでもがわかりやすい文章を書くことを要求されることになるのです。子どもたちがまずわかりやすい文章を書くためには、5W1Hを的確に表現できる「助詞」の使い方を身につけることです。成長する思考力GTシリーズ国語10級はその助詞の使い方が自然に身につくように編集されています。(文/学林舎編集部)

【関連データ】
成長する思考力GTシリーズ国語10級「文のしくみ」の構成
第1回〈 「の」「で」「を」などの文字のつかい方を学ぶ 〉―格助詞
第2回〈 「は」「ばかり」「こそ」などのつかいかたを学ぶ 〉―副助詞
第3回〈 「ば」「けれど」「ので」「ながら」などのつかい方を学ぶ 〉―接続助詞
第4回〈 どんなようすかをあらわすことばのつかい方 〉―形容詞
第5回〈 どんなようすかをあらわすことばのつかい方 〉―形容動詞
第6回〈 ようすやていどをあらわすことばのつかい方 〉―副詞
第7回〈 どんなものかをあらわすことばのつかい方 〉―連体詞
第8回〈 音やようすをあらわすことば 〉―副詞
第9回〈 ていねいなことばのつかい方 〉
第10回〈 カタカナをつかうことばを学ぶ 〉